ハルカ 天空の邪馬台国の感想。

ハルカ 天空の邪馬台国

ハルカ 天空の邪馬台国

天外魔境Ⅲの没シナリオを元にしたという小説「ハルカ 天空の邪馬台国」を読んだ。
んで、感想。
想像以上に「天外」してました。ゲームオタ的には桝田節全開のシナリオといったほうがいいかな。桝田天外ファン、および桝田ファンは必読といっていいくらい素晴らしい出来だと思います。
桝田版の天外魔境といえば、一見は勧善懲悪のストーリーながら、見えにくいところで、週刊誌的なエログロなエッセンスが満載。それでいながらまとめる所はきっちりと美談で心地よいが、やっぱりエログロ。でも、ちょっぴりロマンチスト・・・、という大作を謳ってるわりにマイナー臭がするという素晴らしい作品でした。
「ハルカ 天空の邪馬台国」も、まさにその通りの内容。
ストーリーは、うだつのあがらない高校生「張政」が美少女「ハルカ」の導きにより、戦争真っ最中の3世紀の時代にへタイムスリップしてしまう。そこは、獣人や妖怪が当たり前のように存在し、天空に邪馬台国が浮いているようなとんでもない世界だった。というホントにビックリするぐらいありがちな話である。
だが、そこは桝田省治、普通では終わらない!!
ヒロイン「ハルカ」は超行動派、その上、エッチもオープンだが、巫女のため処女であるという素敵設定
戦争も残酷に展開する。戦争で人間はドラマティックには死なない、あっさりと死ぬ。犬死にだってする。その上、敵が正々堂々とは攻めてこないし、主人公達もそんな馬鹿な戦いはしない・・・。
だからといってひねくれた、いわゆる「すごい作品」と呼ばれるような物語ではない。そんな低レベルな物を読む気はない。この物語はあくまでも面白さを追求した王道のファンタジーであり、決してこれは外れることはない。その点は安心だ。
天外ファンへのサービスも満点。これ注目。
でもちょっとネタバレかもしれないが書くと、

[環状列石でワープ]
[空飛ぶ船]
[土偶型のロボットで溶岩の中を移動]
[わけのわからんテクノロジーを、使えるという理由でとりあえず使ってしまう人々]

等々、天外っぽい要素がいっぱい出てくる。ファンなら思わずニヤリだ。
「おいおい桝田さん、ネタの使いまわしかよ!才能が枯渇したんじゃね?」と考えて、もう一度ニヤリだ。
ゲームの天外魔境をプレイした人以外にも、読んで欲しい一冊。
それに加えて、天外魔境をプレイしたことはあるが、いまいち面白くなかったという人にこそ読んでもらいたい!!
正直、今、天外魔境Ⅱをプレイしても、作品の発表より時間が過ぎていることもあり、過去に僕達が味わった感動は味わえないと思う。
しかし、この作品は現在リアルタイムで進行しているので、僕らが味わった感動をダイレクトで感じられると思うのだ!!

とまあ、褒めちぎったが、気になることもある。これからはちょっと悪口注意。嫌いな人は読まないで良いところ。






まあ、大した事ない上、個人的な感覚的なことなので他の人には関係ないと思う。
でも、ちょっと気になったことがある。それは文章だ。
この物語は一人称で語られる。筆者があとがきで曰く、RPGの雰囲気を伝えるためとしているが
、これだけでは問題ないと思う。問題はこれに語り手である張政の性格が加わった場合だ。
張政くんの性格だが、筆者曰く、第一印象で女性からキモイと言われるような性格、かなりの個性派である。こんなキャラが、主観的な文章である一人称で語ってしまうと、感情移入がしにくく、物語に入り込み難いのだ。
僕自身の感覚だと、物語の序盤、主人公の生い立ちや現在の心境などが主として語られた部分、他のキャラクターが登場してこない部分では、正直物語に入り込めなかった。しかし、脇役、特にヒロインのハルカが登場してからは問題なく物語に没頭できた。それでも時々、主人公が前面に出てくるたびにちょっと引いてしまう。そんな感じだ。
RPGで主人公が喋るとうざい場合がある。主人公=自分と考え、一人称的に考えた場合だ。
主人公が喋るとどうしても主人公が個性を持ってしまい、プレイヤーの個性とぶつかってしまう。そうなると主人公=プレイヤーにならず感情移入がしにくくなってしまうのだ。
天外魔境ではそこらへんをきちんと意識されていたのに、このハルカではそれが感じられなかった。
さらに悪い事に、小説であるがゆえに、これに日本語の特徴が加わる。
日本語は動詞の前に修飾語がくるという構成であり、プラスして擬音語や擬態語が豊富という特徴がある。つまり比較的、感覚や感情が前面に出やすい言語である。
感情移入がしにくい内容が感情が全面的にでる言語で表現される事になってしまうのだ、あまり好ましい状況ではないだろう。
作者的には共感を得ようとした人物のつもりで考え、事実、普通なら共感できるような人物であったとしても、描写した段階で、読者にはひどく気持ち悪く映ってしまう。
まあ、一人称+日本語の組み合わせは主観的+感覚的言語ということで書きやすいという面もあるのだが、読み手には関係ないことだ。
たしか大塚英志氏だったか(違ってたらゴメン。出典はめんどくさいので調べない)、小説講座にて、生徒に小説を書かせたところ、三人称ではうまく書けない生徒も、一人称ではなかなかの文章を書いたそうだ。まあ、余談。
あともう一つ気になったことある。
文章が五感に響いてこないのだ。これは原因が何だかいまいちわからない。
文章の中に生々しい描写は結構ある。でも、それが感覚的に響いてこない。なんていうか、生々しい描写が、とってつけたような感じがする。
生々しい描写がエログロの部分に片寄っているのかな、あくまでも印象だけど。
作者が表現したい事と、僕が読みたい事との間にズレがあるのかな。
文章は好みも大きいけど、僕は上質ではないなと感じた。
ライトノベル的といえばそれまでかもしれない。些細なことでゴメン。
ついでに書くけど、せっかくエロいシーンがあるのに、佐嶋真美氏の美麗な挿絵を入れないとは何事だ!!
まったく・・・、本編よりむしろそっちが重要じゃね?
あ、あと、いいかげん超行動派元気系ヒロインは飽きたので、もっかいやったらワンパの烙印を押そう。
女性受けを狙ってんのかな。おつむの軽い子ならともかく、女性ってめちゃめちゃあっさりと男の媚びを見抜くので、もしそうならやめといたほうがいいと思うけど。
暴れん坊プリンセスで懲りたかと思うのだが・・・。ランキングブログランキング・にほんブログ村へ